経験者が思う、協力隊応募前に考えたいこと 前編

今や日本全国で5000人以上が活躍している「地域おこし協力隊」。
地域ならではの資源活用や地域課題解決をミッションとして働く、やりがいも多いお仕事です。

筆者(移住相談員S)は、東京にあるやまなし暮らし支援センターに所属していますが、2016年まで山梨県内で地域おこし協力隊として活動していました。その立場から少しだけ思うところを書きたいと思います。


※そもそもの地域おこし協力隊制度の説明や事例についてはJOINの地域おこし協力隊特集ページをご参照ください。

※当記事は個人の経験や知見に基づく一意見です。実施機関等とは一切関係がありません。各地域・募集案件の実情をご自身で確認・熟慮されますようお願いします。


1.応募資格は大丈夫?住民票、運転免許、etc.

まず基本的な事ですが条件を確認しましょう。

地域おこし協力隊は、前提として「都市から地方へ人を送り込む」制度です。
つまり現在、地方(都市部以外)に住民票がある方は応募できない可能性があります。詳しくは地域要件に関する総務省の資料をご確認下さい。

地域要件をクリアしたうえで、各地域・案件ごとの条件を見ていきます。代表的なものとしては次のような項目があります。

・年齢(例:20~50歳など)

・運転免許

・健康状態

・PCスキル

・地域活動への貢献意欲

難しい条件はほとんどないと思いますが、どうしても合致しない場合は相談してみましょう(免許がない→就任までの間に取得するなど)。


2.「地域への愛」と「自分の目標」はありますか?

協力隊を”地方で働く手段の一つ”として選ぶ方もいるかと思います。その際、一般的な企業就職とは少し異なる大事なポイントを私なりに挙げてみました。


◆モチベーションは"地域への愛"?

企業では「職場において・会社の利益のために」活躍することが求められると思います。
例えば仕事の内容を理解する、職場環境になじむ、収益を上げる…など。

一方、地域おこし協力隊は「地域のために自分の力を使う」ことが根底の考え方で、そのうえで各地域や募集ごとにミッションが設定されています。


かかわりあう範囲は職場だけでなく地域全体。自分が思う成果につながらなくても地域のため、もしくは付き合いなどでやらなければいけない…そんな仕事もあるかもしれません。

「この地域が好き、地域住民の人々と頑張っていきたい」

「地域で求められるなら、柔軟に色々やってみよう」

という前向きな気持ちが、充実したしごととくらしを送る大切な基礎になります。


ちなみに…フリーなイメージの強い協力隊ですが、実はその立場上、地元の住民からは「公務員」「行政の人」として見られることが多いです。ときには滅私奉公的な振る舞いが求められたり、活動と関係が薄そうな政治的な要望を言われたり、ということもあります。
(理不尽や苦痛に耐えろ!ということではなく、そんな現実とも上手に付き合っていただけたらなと思います)


◆自分の目標を持とう

地域を愛する気持ちはバッチリ。3年間頑張れそう。でも、その先は?

地域おこし協力隊の委嘱期間は同地域で最長3年間です(1年単位で更新)。

3年後卒業を迎えたら、どんな形で生計を立てるのか。何を実現していたいのか。そこへ向かって、協力隊活動中にどんなことをやっていきたいのか。地域で働く人や先輩隊員に話を聞くなどしながらイメージしていきましょう。


皆さんにとってのゴールが地域で何らかを成し遂げることなのか、

それとも好きな地域で暮らしていくことなのか。

この2点は似ているようで大きく違うこと。なのでそこに至る働き方も違ったものになっていくと思います。どちらが良い・悪いではなく。

いずれにしても、協力隊任期中の活動内容と、その後のナリワイはかなりの部分で重なり合ってくるはず。(やりながら変わっていくこともあると思いますが)

例えば、

空き家のマッチングをミッションにしていた人が、実際に空き家を活用した商売を始めたり(起業)

地域の特産品開発を手掛けていた人が、地元の観光関係団体に入職し、道の駅のスタッフになったり(就業)

もちろん、3年間しっかり農業の技術を身に着けたのち、独立就農! という事例も少なくありません。

参考までに、総務省の調査結果によると、卒業時に定住した人のうち

・就業・・・43%

・起業・・・36%
・第一次産業等・・・13%

などとなっています。

協力隊の進路についてもっと詳しく相談したい方は、地域おこし協力隊サポートデスクの活用もおすすめです。協力隊OB,OGや行政職員の方が対応してくださいます。


(余談)

ちなみに私は、情報発信がやりたい&仲間との事業作りに希望を感じて協力隊になりました。
しかし卒業後のビジョンは“地域で活躍する人になりたい”程度しかなく。
もし何も得ることができず仕事に困ったとしたら、地元に帰って勉強して公務員試験を受ける! と、両親を説得したことは覚えています…。


結果的に任期後は「全国の地域をもっと知りたい、情報発信に関わりたい!」と東京都内のベンチャー企業へ入社。協力隊時代の情報発信経験を活かしてWEBメディアの立ち上げにも携わりました。

そして、東京にいながらより地域の役に立つありかたを模索した結果、移住相談員という立場にいます。

たくさんの貴重な経験を活かして自分らしく楽しくキャリアを歩むことができているかな、と思います。


記事では他にも、

・“働く環境”を見極めよう(人員体制、待遇、副業可否…)

・仕事の9割はコミュニケーション?!柔軟さが必要です

・月16万円って多いの?少ないの? 家計簿を考える

といったことを書きたかったのですが長ったらしいので、次の記事にまとめます。まだまだ読めるぞという方は後編にどうぞ。↓